2014年4月4日金曜日

鎮魂と再生の祭り」膨らむ構想(305asahi)

みちのくアート巡礼・赤坂憲雄

 「まだ妄想状態ですが」と断りながら、赤坂憲雄・学習院大教授(60)は「みちのくアート巡礼」というプロジェクト構想を語る。
「被災地で毎年11カ所、アートイベントを開き、人々が巡礼のようにたどって歩く。8年続ければ88カ所の『札所』となり、鎮魂と再生のモニュメントが残される」という内容だ。
 専門は民俗学。福島出身の父祖に導かれるように東北各地を歩き、総合的な地域研究「東北学」を提唱してきた。
 東北芸術工科大(山形市)の教員となったことでアートが身近に。大学院長を務めた2006年ごろから、山間の湯治場を舞台にした小さなアートイベントに関わった。「院生らが湯治場の人々と交流しながら制作をすることで、地元の若者の活動も盛んになり、裏返していた湯治場の風景が変わった」
 その後、福島県立博物館(会津若松市)の館長として10年から「会津・漆の芸術祭」を開催。地場産業・漆工の職人と現代アートの作家が協働する試みだった。地域に関わるアートの可能性に確信を深め、福島と北開東、新潟を巡る広域型アートイベントを構想し
ていたところに、震災が東日本を襲った。
 被災地、とりわけ原発事故に見舞われた福島には、「復興や賠償を巡って、深刻な分断と対立がある。だからこそアートの無用性と無償性が武器になる」。被災地の隠された現実を思いがけない形で浮き彫りにし、人々を祈りや瞑憩に導くアートへの期待が「巡礼」構想に発展した。
 これまで各地でアートイベントの「種」をまいてきた。すでに「巡礼」構想に参加したいという声も届いている。「東京オリンピックという中央集権的な『祭り』とは対極的に、草の根の小さなイベントをつなぐ『鎮魂と再生の祭り』を目指したい」  (西岡一正)

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