2013年8月5日月曜日

桜井進の数と科学のストーリー(804asahi)

計算の世界「i」で縦横無尽

 「虚数」という不思議な数があります。2乗すると負(マイナス)になる数です。1(;世紀のイタリアの数学者ジュロラモ・カルダーノ(150176)によっ七発見されていましたが、iXi1となる虚数iは、長い間数学者の間でもリアルな存在として受け入れられませんでした。
 私たちが現実世界で出くわす数は「実数」です。体重は70キロ、気温−5度、1つレ=9802円、12カップなどがそうです。実数は、正の実数も負の実数も2乗すると正
の実数になりますね。
 2乗して一1になる「虚数」と「実数」を複合した「複素数」と呼ばれる数の世界があります。「複素数」は実数xyと虚数iを使い、+yiと表される数です。16世紀、解を持たないとされていた方程式にも解を与えられるように導入された数が「複素数」です。ここから発展してドイツの数学者カール・フリードリヒ・ガウス(17771855)によって、
「どんなn次方程式も複素数の範囲に解を持つ」という「代数学の基本定理」が証明されました。 一方で、これまでこの連載に登場してきた三角関数、一指数関数、対数関数も、虚数を通して深く結びついていることを明らかにしたのが、レオンハルト・オイラー
170783)です。.有名な「オイラーの公式」ですね。オイラーは、「i」という乗り物で計算の世界を縦横無尽に旅をして、新たな地平線にたどりつきました。単に「方程式の解が表現できるようにする」という目的をこえ、虚数の威力を示したのです。
 20世紀、人類は量子力学と呼ばれる新しい理論を手にいれました。ここでは複素数が決定的な役割を演じます。数学を超えて素粒子を探求する物理学にまで虚数と複素数の威力が及んだのです。しかし、小数などの実数を使い慣れるまでに時間がかかったのと同様、虚数と複素数もまた、私たちがリアリティーを感じるまでには長い時間がかかりそうです。(サイエンスナビゲーター)

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