2013年5月3日金曜日

収集品を全て寄贈した現代美術コレクター(429asahi)


ドロシー・ボーグルさん(77

 夫ハーブさんとともに、半世紀かけて世界有数の現代美術コレクションを築いた。夫妻を取り上げたドキュメンタリー映画「ハーブ&ドロシー」(佐々木新出監督)は日本でロングランに。今春公開された続編「ハーブ&ドロシーふたりからの贈りもの」は、5千点近い収集品をすべて全米の美術館に寄贈するまでを描いた。
 元公立図書館司書。自身の給料を生活費にし、郵便局貞だったハーブさんの給料を絵画やオブジェの購入費用にあてた。「私は知的な抽象画を、ハーブは鮮やかな色彩の作品を好んだ。でも彼が好きな作品は不思議と私も好きになった。彼もそうだったと思う」
 2人で芸術家に制作の動機や過程を聞くのが常だった。意気投合した芸術家が破格の値段で譲ってくれた作品も多い。新婚時代から住むマンハッタンの1LDKのアパートは、アートであふれた。
 3月に初来日し、東京や大阪の映画館で大観衆を前にあいさつした。「私はハーブと好きなことを続けてきただけ。映画になるなんて思ってもみなかった。日本でこんなに温かく受け入れてもらえたことは驚きで、とてもうれしい」
 昨夏、ハーブさんが89歳で亡くなると、収集の終了を宣言した寄贈が終わり、がらんとしたアパートには今、結婚前にハーブさんがドロシーさんをモチーフに措いた油彩画1点だけを飾っている。
  文・春日芳晃 写真森本真理氏

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