2012年10月7日日曜日

無意識・無自覚暴き出す(105asahi)


ChimPom」展/西野達作品
 常識を逸脱し、無意識や無自覚を覚醒させる。ある種の現代美術は、そんなことに挑み続けてきた。いま、常識からの逸脱といえば、6人組の「ChiPom」だろう。矢継ぎ早な
発表が続く彼らが、東京・渋谷のパルコで個展を開いている。

 建物外壁の「PARCO」のネオンから、「P」と「C」を取り外し、室内で「CP(チン
ポム)」と光らせる作品なども楽しいが、見逃せないのが、ビデオ作品の「東京BOMBer
man」 (2012年)だ。
 夜の渋谷にメンバーが現れ、路上のゴミ袋に次々と三つ葉状の「放射線マーク」を描いていく=写真上。これで放射性ゴミということか。なんと大胆な。
 いや、しかし、人々はほとんど無反応。これにもっと驚く。人々は通り過ぎ、交番の近くでもできてしまう。そして翌朝、淡々と収集車に回収される。この何も起こらなさに現実が透けて見え、怖くなってくる。
 西野達(1960年生まれ)が新潟市の「水と土の芸術祭」に出品している「知らないのは
お前だけ」は、さらに過激だ。
 平屋の旧教員住宅を訪ねると足場が組まれ、仮設屋根が載っている。で、階段を上って中に入ると、屋根がスパッと切り取られ、生活感のある部屋が上からのぞき込める。しかもたいてい人が暮らしているのだ=同下。正確には「展示される」前提で申し込んだ人が滞在しているのだが、彼らが会話をしたり食事をしたり、といった場面に出くわすこともあるという。
 「動物園」ならぬ「人間園」とも言えるが、思い浮かぶのが監視社会や防犯カメラあふれる街角。あるいは、私生活が放映される映画「トゥルーマン・ショー」か。それを実空間で展開し、生々しく突きっけるのだ。
 では、「知らないお前」とは誰か。部屋で見られている人なのか。でも、それを見て「ははーん」などと思っている自分もまた、知らないうちに見られているのかもしれないのだ。
 チンポムと西野が逸脱しながら暴き出すものは、無意識と無自覚だけに、なかなか恐ろしい。  (編集委員・大西若人)
 ▽チンポム展は14日まで、東京・渋谷パルコ・パート1。西野の展示は、1224日まで新潟市秋葉区文京町2丁目の小須戸中学プール前。火、水曜休み。

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