2012年10月10日水曜日

表現深化、内面映す(1010asahi)


愛知・メナード美術館舟越桂個展
「妻の肖像」など22

 リアリティーと神秘性。二つが重なり合う木彫の人物像を生み出す舟越桂(飢)の個展
が、愛知県小牧市のメナード美術館で開かれている。
 約30年間、クスノキに彩色をした肖像彫刻にこだわってきた。これまでに制作した142点の木彫作品のうち、最初期の「妻の肖像」 (197980年)から最新作「月の
降る森」 (2012年)まで、計22点が出品されている。
 表現は深化している。初期には、都会的なファッションとポーズ。その後、脱が胴体
から突き出たような造形や両性具有のスフィンクスに移る。最近は幻想的な女性像が
登場する。
 「月の降る森」もそうだ。「月夜の森の奥で教会のような建物から、女性が生えてい
る場面が浮かんで。美しいものに見えた」。このイメージから、青みがかった影を帯び
た女性の裸体と建物を合体した作品を誕生させた。
 「人間の存在、個人の不思議さ、神秘さをずっと考えてきたことが根っこにある」と
舟越。
 目に見える木彫で表現しているのは、目に見えない人間の内面なのだろう。現実離れ
した造形を評する際に用いられる「異形」との表現には違和感があり、「心象人物」と
くくるのがふさわしいという。
 昨年の東日本大震災で、「アーティストは何の役にも立たないのか」と心が沈んだ
時期があったという。新作にそうした経緯が意識的には影響していないというが、クリ
スチャンである舟越の背景も重なり、神聖な印象を放つ。(高橋昌宏)
 ▽1125日まで。月曜休館。同美術館(0568755787)。

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