2012年7月5日木曜日

しつけに効く!?地獄絵本(704asahi)

口コミで売れ行き倍増

 悪いことをしたら地獄へ落ちるぞ。こわーい地獄絵とともに説いた絵本が、売れている。
半年で10万部 
「読んだ後、子どもが言うことを聞くようになった」。そんな評判が広がり、若い母親らが買っていくという風涛社の「絵本地獄」 (1575円、宮次男監修)。総合オンラインストア・アマゾンの今年上半期の絵本部門ランキングで1位になるなど、とにかく売れている。
 発行は1980年。昨年末まで約30年間の捨売り上げは約11万部。年間3千部売れればいい方だった。
 それが昨年11月、東村アキコさんの育児マンガ「ママはテンパリスト」 (集英
社)で紹介されると、口コミやネットで話題になり、直後から売れ行きが倍増。一時は品薄状態になった。この半年だけで約10万部が売れた。社長の高橋栄さん(47)も「正直、戸惑っている」と話す。
 本を企画したのは、先代の社長で高橋さんの父・行雄さん(81)。当時、いじめ
が社会問題化し、子どもが自ら命を絶つ事件も起きていた。「命を粗末にしては
いけない。死について考えて欲しい」との思いで出版したという。
 千葉県南房総市の延命寺所蔵の、江戸時代に措かれた絵巻物の迫力のある地獄
絵を使い、美術史家の故・宮次男さんの監修で、独自のストーリーを考えた。
 地獄行きを命じられ、鬼が人の体を切り刻むといった恐ろしい光景を目の当こ
りにした主人公が、「命を末にしたり、人を悲しませたりはしない」と行いを改
める−。これまで「残虐すぎる」といった批判はない。実際に読み聞かせた人からは「何度見ても泣く子もなぜか『また見たい、読んで』と言ってきます」などの感想が寄せられている。
手法に慎重論
 ただ、幼い子に怖い絵を見せて言うことを聞かせるやり方には慎重論もある。
 恵泉女学園大大学院の大日向雅美教授(発達心理学)は「恐怖を与えて、悪
いことをしないという結果を求めるのは短絡的だ。なぜしてはいけないのかを自
分で考える過程が大事」。判断能力が発達する小学3、4年生以上を対象に読み聞かせるべきだという。
 別府大学の中村広光。幼児・児童教育研究センタす長(臨床心理学)は、「言
うことを聞かないと鬼が来るぞ」などと怖がらせて子どもをしつける方法は昔か
らあったと指摘。深刻なトラウマになることはないが、子どもの性格にも配慮
した方がいいと勧める。「臆病な子にはあまり怖がらせないように声色を変え
るなど、子どもとコミュニケーションをとりながら読んでみては」 (北林晃治)

0 件のコメント:

コメントを投稿