2012年4月24日火曜日

「ひっくりかえる一 Turning around−展」(418asahi)

「転倒」しつつ変化促す決意
 アートは現実を変えられるか。おおかたの答えは「ノー」だろう。だが、現実がはらむ問題を指し示し、変化を促すことはできるかもしれない。そうした試みを鏡ける国内外の作家を招く「ひっくりかえるーTurning around−展」が東京で開かれている。
 企画したのは日本の若手美術家集団「Chim↑Pom」。集災後いち早く鷲第一原発を目指すなど、先鋭的な活動を続ける。ネットの情報などを辛がかりに、問題意鼓を共有する作
家に呼びかけ、半年ぼどで開催にこぎつけた。その速度は、ツイッターなどで多数の市民が参加し、国境を超えて広がった「アラブの書」や「オキュパイ運動」をほうふつさせる。
 海外からは4組が参加。ヴォイナ(ロシア)は、治安当局の庁舎前にある可動橋に男性器の巨大な落菖きを措くなど、過激な表現で強権的な社会の実態をあぶりだす。JR(仏)は貧困や差別に苦しむ人々を撮影し、ポスターとして街頭に貼る活動を世界各国で展開。巨大な顔や目のポスターをスラム街に配したプロジェクト「28ミリ、女性たちこそがヒーロー」 (写暮上は「2008、リオ・デ・ジャネイロ」)は、弱者への関心を呼び覚ます。
 アドバスターズ(カナダ)は、広告を掲載せず購読料だけで運営する雑誌を発行。消費をあおる既存のメディアを批判する。一方、イエスメン(米)は、2008年にニューヨーク・タイムズそっくりの新聞を09年の日付で製作、配布。1面に「イラク戦争終結」の記事を掲げ、未来への希望をうたった。
 国内は竹内公太、丸木位里・俊ら5組。新旧7点を見せるチン↑ポムが目を引く。メンバーの1人が作業員として福島第一原発に入り、レッドカードを掲げる写真作品「Red Card 2011」=同下=は直球のメッセージ。ガラスの矢印が階上から落下し、ひび割れた状態で床面につきささる表現は、日本社会の現状を思わせて胸に迫る。
 参加者の多くは00年前後から活動する。「9・11」から「3・11」へ世界は混迷を深めるばかり。その中で作家自らも「転倒」しつつ変化を促す。「ひっくりかえる」とは、その決意表明にほかならない。(西岡一正)
 ▽7月8日まで、東京都渋谷区神宮前3の7の6のワタリウム美術館。4月30日を除く月曜
休館。

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