2012年3月24日土曜日

「311」森達也監督に聞く(309asahi)

後ろめたいでも逃げずに言う
          
 森達也、綿井健陽、松林要樹、安岡卓治の4人が東日本大震災の被災地で撮ったドキュメンタリー「311」が公開されている。被災地取材のあり方を過激に問う内容だ。
 両親を失った子供が避難所にいるとの情報を得た森監督が、独りでいる少年に声をかける。ところが彼の両親は健在と分かる。失望を隠せない監督を別のカメラが捉える。
 「我々はなぜ被災地に行くのか。そこに被害があるからです」と森監督。「人の不幸を撮ろうとしているんです。何て卑しい仕事なんだ、と」
 福島県で放射線量の数値が上がるたびに、4人がはしゃぐ場面も映し出される。
 「怖くて仕方ないからハイになっていたんです。当然不謹慎だと言われるだろうが、カットしなかった。鉢呂経産相の辞任や東海テレビの誤テロップ騒動など、被害者への
配慮との理屈で自由にモノが言えなくなっている。そんな風潮にあらがいたかった」
 多数の死者が出た宮城県石巻市では、連休を撮影した安岡監督が遺族の男性から角材
を投げつけられる。
 森監督は言う。「怒るのは当たり前。まず『ごめんなさい』と謝ります。『でも、撮
ります』と。その矛盾を引き受ける必要がある。後ろめたいですよ。でもそこを紛らわ
せば、頑張ろう日本とか、そっちに行っちゃう。否定はしないが、一色になりすぎる」
 東京・渋谷のユーロスペース。順次各地で
4人の共著『311を撮る』も岩波書店から刊行された。(石飛徳樹)

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