2011年6月19日日曜日

自動人形からくりシアターの世界(612asacoco)

ムットーニ氏が創り出す



 自動人形師として知られるアーティスト・ムットーニ(武藤政彦)氏(55)が八王子市夢美術館で2年前に行った「ムットーニワールドからくりシアター」の続編。週末には作者自らが作品の中で展開するストーリーを語り、作品を紹介する。その独特の世界を「動く絵画」と呼ぶ人もいる。

 観客の人影がかすかに見える暗闇の零式萱。籍のふたが開き、光に照らされた天使が自動で回転しながら夜空に上がっていく。他の箱からもフラミンゴ、鳥の妖精、かつて飛んでいたころを追想する飛べなくなった天使などが登場して、物語の世界に引き込んでいく。
 今回の夢美術館での作品展の新作「『エッジ・オフ・リング』ウイング・エレメント」は、ムットーニ氏が今年、4カ月かけて創り出した5台組みの作品だ。
 国立市にあるアトリエで、すべてを⊥人で制作している。粘土の人形、装置の多様な動き、照明、音楽、効果音。ときにはムットーニ氏自ら口上やナレーションを入れることもある。
 こうした特徴から総合芸術と評され、本人だけでなく、作品までが親しみを込めてムットーニと呼ばれる。
 ムット」ニ氏は横浜市生まれ。工場が立ち並ぶ京浜工業地帯で育った。高校時代はブラスバンド部のトランペッター。ュ浪して国立市にあった創形美術学校(現在は豊島区)を卒業後、同研究科⊥年修了。当時は油陰の画家を目指し、コンペに
ひたすら応募する。だが、賞を獲りたい一心で傾向と対策を考える余りに、措く絵がころころ変わり、自分を見失ってしまった。

人形が世界を旅してきた

 そんなある日、会社員から苦学して弁護士になった父親に言われた。「お前は俺よりも難しい道を選んだ。弁護士は司法試験に受かれば誰でもなれる」
 長年、父子の葛藤が続き、互いに反目していた父親のひと善が、自分を見直すきっかけになった。25歳のときだった。
 「ふと、丸いちゃぶ台の上で、油粘土細工に熱中した小学生のころの楽しさを思い出したんです。そこで油絵で描いていたキャラクターを粘土に起こしてみた。楽しかったなあ。もうゴロゴロできて」
 ビデオカメラができ、ビデオアート初期の時代だ。「ターンテーブルに粘土の人形を乗せると、重たいのでゆっくりと回り舞台が動き出す。背景、顔の影−なんだか人形が世界を旅してきたみたいで。回ることで申にしみ込んでいた記憶、にお
い、物語が出てくる。これをなんとか作品にできないかと思ったのが、自動人形の始まりです」
 高校時代はあふれるイメージを油絵にし、その物語日記を書きつづった。その「おはなし玉手箱」も今の作品の脚本に生かされている。
 「僕の作った人形たちは主役じゃない。僕の作った世界と観ている人たちとの仲介役です。観客は自分の体験と重ね合わせて、その世界を見ている。そのように作りたいと思っています」
展示会情報
 自動人形作品約20台展示。油絵、レリーフも。ムットーニ氏の上演会は金曜は15時から。土、日曜は14時と15時の2回。
 6月26日まで開催。JR八王子駅北口から徒歩15分。開館10′−17時(入館は16時半まで)。月曜休み。500円。小学生以上の学生と65歳以上250円。未就学児と土、日曜の小中学生夕無料。〈間〉042−62-6777八王子市夢美術館

0 件のコメント:

コメントを投稿