2011年1月13日木曜日

冷静に美術と向き合う(113asahi)

神野真吾さん(43)千葉大学准教授


 美術って何だ。特別なものなのか? 自らと周囲に問い、走り続けている。
 主舞台は、5年前から実行委員長を務める千葉アートネットワーク・プロジェクト(W・1CAN)。芸術学を教える千葉大を母体に、地域社会と美術館、アーティストらがともに活動する。
 今年度のテーマは「学校」。あえて「美術ありき」ではない現場で、学生に調べ、考えさせた。その成果としての空き教室の活用法を、建築案の模型などとともに、千葉市美術館のプロジェクトルームで2月4日まで展示している。
 「文化をつくる」というれっきとした授業の一痍でもある。教養科目なので学生の専攻は様々で、「だから美術に冷静な距離を置ける」という。それは、冒頭の問いに向き合う姿勢でもある。
 美術やアートというだけで無批判に受け入れがちな空気に疑問を抱く。「例えば西洋の名画のような実は、美術のほんの一部。むしろ視点をずらしたり、異なる側面から光を当てたり、時に抵抗感さえ拘く『オルタナティブな価値』を示すことが重要だと思う」一方、各地でアートプロジェクトが「オルタナティブ」としてもてはやされる現実に「安上がりな地域イベントと化していないか」とも。むろんW・ュCANもうまくいくばかりではなく、報告喜に悔しさをにじませた年もあった。
 それでも「美術を通じて人は様々な人やものとつながり、変わる」と手応えを感じている。自身、学生時代にドイツの伝説的な現代美術家、ヨーゼフ・ボイスの作品と出合って気づいたことだ。
 美術による「つながり」の可能性を伝えようと、美術教育誌への執筆など教育の視点からも横板的に発言する。「学校」のプロジェクトは腰を据えて取り組むことになりそうだ。   (小川雪)

0 件のコメント:

コメントを投稿