2010年8月8日日曜日

奇想天外立体作品が新鮮(728asahi)



「羊ユー・スピーク」展 ロンドン

 ロンドン南部の新サーチ・ギャラリーで、久々に大規模な英国現代美術展「ニュー・スピーク」(第一部10月17日まで)が開催され、話題を呼んでいる。
 ここは大事広告会社の創業者で世界有数の美術収集家、チャールズ・サーチ氏(67)の個人ギャラリー。1990年代にYBA(YOungBritishArtists)と呼ばれるセンセーショナルな作品の展示で静議を呼ぶ一方、ダミアン・ハーストらを国際舞台に押し上げた人物だ。
 ギャラリーは85年に開館し、2008年に旧陸軍兵舎を改装した今の建物に移転。ロンドンの新名所として人気を集めている。
 「ニュー・スピーク」は、オーウェルの小説「1984年」に出てくる架空の書斎。今展では、美術家によって拡大・増殖する新しい視覚言帯を見せる意味を込めたという。地下も含めて4フロア、13展示室のほとんどを使い、戌が最近収集した、年齢も知名度も様々な英国在住の29人の油絵や立体作品がゆったりと展示される。
 今回も蛍光色を使ったテンペラ画など奇をてらった作品もある。が、サンデー・タイムズ紙は「刺激的で、サーチ氏の展覧会では過去最高のもの」と辞した。全体に芸術性は高く、もう見尽くしたかと患った英国現代美術界に、まだこんなにたくさん才能に恵まれた美術家がいたのかと思わせる。
 中でも、積み上げた300個のスピーカーから瞑想的な音が流れるジョン・ワインのインスタレーション=写真上=、大きな紙袋などで作ったカーラ・ブラックの彫刻、2脚のいすの上に女性が死体のように横たわるゴシュカ・マクガの不思議な彫刻=写実下、いずれも筆者撮影=など、立休作品が新鮮だ。
 サーチ氏は今月、所有する美術品約200点とギャラリーを引退時に国に寄付したいと発表し、国民をあっと言わせた。政府側は歓迎の意を表している。氏にはこれまで、収集品を芸術と見なさない保守紙や美術家から、常に懐疑的な声があった。だが、新政府による文化予算の大削減を控えた今の英国で、人々は慈善事業家としての彼に敬意を払い始めている「
    (ライター・菅伸子)

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