2010年5月9日日曜日

「鉄男」世界仕様に(430asahi引用)


(「鉄男 THE BULLET MAN」)

シリーズ3作目トライベッカ映画棄で上映

カルト×合理性

 暴力、猟奇、エロス。カルト映画の世界で絶大な人気を誇る塚本晋也監督の看板作品「鉄男」シリーズの新作「鉄男 THE BULLET MAN」が今月、米ニューヨークのトライベッカ映画祭で上映された。怒りで体が鋼鉄に変化する主人公の設定はそのままに、世界でうける「カルトな娯楽映画」を目指す監督が出した一つの答えとなる作品だ。  (ロサンゼルス=堀内隆)

塚本普也監督、「苦悶」を柱に

 3月、人道や環境問題に貢献した映画人を顕彰する「グリーンプラネット映画賞」に参加するため訪れた米ロサンゼルスで、塚本監督に話を聞いた。
 「鉄男」シリーズの第1作は1989年に誕生した。変哲のない暮らしをしていた男の生身の身体が全身まるごと鉄で覆われ、さらに銃器と化していく。男自身は、その変身の訳が分からない。ホラー色を色濃く帯びた不条理劇だ。
 それから20年。シリーズ3作目となる今回の「鉄男 THE BULLET MAN」制作の話は、米国で持ち上がった。シリーズ2作目の「鉄男Ⅱ BODY HAMMER」 (92年)を映画祭で見た米ハリウッドのプロデューサーから「米国版を作らないか」と持ちかけられた。プロデューサーを買って出た中には、クエンティン・タランティーノ監督もいた。
 だが、壁が立ちはだかった。「鉄になるのはおもしろいけど、何で鉄になるのか分からない」。それが、米国のプロデューサーたちの意見だった。
 ある程度一般受けを狙わなければならないハリウッドの論理で映画を作るのは、観客層の「射程」を絞り込むカルトの世界で生きてきた監督には想像以上に難しい作業だった。人間が鋼鉄の兵器に変わるという説明不能の設定こそが持ち味のシリーズだ。
 「鉄男のパワーは合理的に説明できない。鉄男の本来のテーマと、鉄になる『合理的な理由』が重なる部分を、ずっと探していた」と塚本監督。ようやく撮影計画が始まったのが07年末。昨年のベネチア映画祭で上映された後も、観客の反応をもとにせりふに手を加え、追加撮影や再編集の労も惜しまなかった。一般の観客をどう引き込むか。苦
労の跡は筋書きにみられる。東京の外資系企業で働く主人公アンソニーは、鉄の「鎧」と化した人間兵器に変わる力がある。謎の男に息子をひき殺され、それでも「怒りの感情を持ってはならない」という両親の教えを守ろうとして苦悶する。「世界を破壊する力を持つ男が、その力を使っていいのかどうか悩むところは、米国など海外の観客も同じ視点で見られると思う」
 「グリーンプラネット映画賞」では「今年、最も期待される国際映画」に選ばれた。日本では5月22日に公開される。

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